「ローカルPCではVRAMが足りなくて Llama 3.3 70B が動かない」「Stable Diffusion 3.5 や FLUX を試したいが RTX 4090 を買う予算がない」——そんなときに最も柔軟で安いGPU調達手段が、本記事で紹介するクラウドGPUマーケットプレイス Vast.ai(ヴァスト・ドット・エーアイ)です。世界中の余剰GPUをP2Pで貸し借りする仕組みで、RTX 4090 を時間あたり 0.31ドル前後、H100 を 0.90ドル前後から借りられます。AWS や GCP の 1/5〜1/10 という価格破壊が最大の武器です。
本記事は 2026年6月時点の最新情報(Vast.ai 2026年5月製品アップデート / vastai 統合 pip パッケージ / 二要素認証 TOTP 対応 / Serverless SDK 公開ベータ)にもとづき、アカウント作成から70Bモデルの実運用、ローカルPCとのコスト分岐点まで 1万8000字 で網羅します。読み終えたとき、あなたは「自分のワークロードはローカルで持つべきか、Vast.aiで借りるべきか」を即断できる状態になっています。
とくに本ブログの読者である「ローカルLLM運用勢」にとって、Vast.ai は ローカルPCを補完するスポット火力として極めて優秀です。本記事では単なる紹介に留まらず、ローカルPC と Vast.ai の月次コスト試算、ハイブリッド運用パターン、セキュリティリスクとその回避策まで踏み込みます。
- Vast.ai とは何か:GPUマーケットプレイスの位置づけ
- 2026年最新リリース情報:直近6ヶ月の主要アップデート
- 他のGPUクラウドとの比較:どこが安く、どこが速いか
- Vast.ai のメリットとデメリット(正直な評価)
- 動作要件と前提知識
- アカウント作成からGPU起動までの完全手順
- 初期設定:起動直後にやるべき5つの設定
- 基本的な使い方:3つの主要ユースケース
- 実践:ローカルで動かせない大型モデルをクラウドで動かす完全手順
- 応用・カスタマイズ:パワーユーザー向け設定
- パフォーマンス最適化:コストと速度の両立
- よくあるエラーとトラブルシューティング
- おすすめの組み合わせ・連携:ローカルPCとのハイブリッド運用
- 推奨PCスペック(クライアント側)と接続環境
- セキュリティとプライバシー:機密データを扱う際の必須注意
- ローカルPC運用とのコスト分岐点:いつローカルを買うべきか
- まとめ:Vast.ai を使うべき人、避けるべき人
- 📦 この記事で紹介した商品
Vast.ai とは何か:GPUマーケットプレイスの位置づけ
Vast.ai は 2018年創業の米国企業で、世界中の余剰GPU(データセンター、企業の遊休資産、大規模マイニング業者の転用機)をP2Pマーケットプレイスとして取引するサービスです。創業以来 主要なセキュリティインシデントゼロを維持しており、現在は 40以上のデータセンター、20,000以上のGPUが稼働しています。
「クラウド」ではなく「マーケットプレイス」である理由
AWS や GCP は自社所有のサーバ群を貸し出します。Vast.ai は違います。価格を Vast.ai 側で決めません。GPU を貸したい「ホスト」が値段を提示し、借りたい「クライアント」が需給で選びます。これにより、たとえば仮想通貨マイニングの収益が下がった時期にはGPUの貸出単価が大幅に下落するなど、市場原理で常に最安水準が維持される仕組みです。
結果として、同じH100でも Lambda Labs では時間 3.29ドル、RunPod では 2.89ドル なのに対し、Vast.ai では Verified ホストで 0.90ドル〜2.50ドルという大幅な価格差が常時発生しています。
ライセンスと料金体系の基本
- 運営元: Vast.ai, Inc.(米国)
- サービス開始: 2018年
- 課金単位: 秒単位課金(Per-second billing)。1分でも10分でも、使った分だけ
- 最低デポジット: 5ドル(クレジットカード/BitPay/Crypto.com 払い)
- 料金ティア: 3種類(後述)
- On-demand: 通常の借り上げ。中断なし
- Interruptible: 競売式で50%以上割引。ただし高額入札に上書きされる
- Reserved: 1/3/6ヶ月コミットで最大50%割引
- 対応GPU種別: 68種類以上(RTX 3060 から最新の B200 まで)
2026年最新リリース情報:直近6ヶ月の主要アップデート
Vast.ai は2026年に入ってからプラットフォーム機能を大きく拡張しました。とくに 5月のアップデートは利用者全員に影響する重要変更を含むため、確実に把握してください。
2026年5月製品アップデート(2026-05-12 公開)
- 二要素認証 (2FA) の TOTP アプリ対応:従来のSMS必須からGoogle Authenticator、1Password、Authy 等の認証アプリに対応。バックアップコードが自動発行され、CLIからも2FA設定可能に
- ベンチマーク CLI の導入:H100/A100/RTX 5090/RTX 4090 などの複数GPU型を並列ベンチして、自分のワークロードに最適なGPUを定量比較できる新機能
- All-in-One App Studio テンプレート:画像生成・動画生成・音楽生成・音声合成・文字起こし・LoRA学習・LLMファインチューニングを1コンテナで統合。KDE Plasma + Blender のGPU加速リモートデスクトップ付き
- vastai pip パッケージへの統合:従来別パッケージだった CLI と SDK が
pip install vastai1つに統合された。古いvastai-sdkも後方互換で残るが、新規はvastai推奨 - CopyFail エクスプロイト対策の全面展開によるセキュリティ強化
2026年4月製品アップデート
- Serverless SDK(Python)の公開ベータ:Dockerイメージ、APTパッケージ、オートスケール設定をすべてPythonコードで定義し、デプロイ可能。ダッシュボード操作なしでGPUエンドポイントを生成・管理できる
- 大量インスタンス管理の高速化:ページネーション導入で、数十〜数百のインスタンスを抱えるユーザーでも快適に
- Serverless メトリクス可視化の改善:レイテンシ、QPS、コールドスタート率を時系列で確認可能に
- 新テンプレート/ガイドの大量追加:学習・推論・マルチモーダル・モデル移行用ワークフロー
テンプレートに新たに加わった対応モデル(2026年5-6月時点)
- Kimi K2.6(Moonshot AI 最新世代)
- Qwen3.6 35B A3B / Qwen3.5 27B(Alibaba)
- Gemma 4 31B IT(Google)
- Unsloth Studio(高速ファインチューニング環境)
- Autoresearch(自律研究エージェント実行環境)
テンプレートは cloud.vast.ai/templates で全件公開されています。執筆時点で公式・コミュニティ合計 400以上のテンプレートが利用可能です。
他のGPUクラウドとの比較:どこが安く、どこが速いか
Vast.ai を選ぶ前に、競合となる主要GPUクラウドサービスとの違いを正確に押さえてください。2026年6月時点の最新価格で比較します。価格は公式ページ・サードパーティ価格インデックス・各社価格表を直接確認した値です。
主要4サービス価格比較表
| GPU | Vast.ai | RunPod (Secure) | Lambda Labs | Paperspace |
|---|---|---|---|---|
| RTX 4090 (24GB) | $0.31〜0.52/hr | $0.69/hr | 非取扱 | 非取扱 |
| RTX 5090 (32GB) | $0.66〜2.00/hr | $0.99/hr | 非取扱 | 非取扱 |
| A100 80GB | $0.67〜1.50/hr | $1.39〜1.49/hr | $1.29/hr | $3.09/hr |
| H100 80GB | $0.90〜2.50/hr | $2.89/hr | $3.29〜3.99/hr | $5.95/hr |
| H200 | 提供あり(変動) | $4.39/hr | 非取扱 | 非取扱 |
| B200 | 提供あり(変動) | $5.89/hr | $4.99〜5.29/hr | 非取扱 |
| 最低デポジット | 5ドル | 10ドル | クレカ登録のみ | サブスク制 |
| SLA保証 | Secure Cloudのみ | Secure 99.5%/Community 97-99% | 99.5%+ | あり |
各サービスの強みと向き不向き
| サービス | 強み | 向く用途 | 向かない用途 |
|---|---|---|---|
| Vast.ai | 圧倒的低価格・GPU種類豊富・秒課金 | 個人開発・実験・スポット推論・LoRA学習 | 本番SLA必須・機密データ・長時間連続学習 |
| RunPod | Serverless強い・コンテナ模範・Secure/Community両建て | API/推論サーバ・バースト型ワークロード | 最安重視 |
| Lambda Labs | 自社DC・SLA高・MLエンジニアサポート | 本番学習・企業案件・長期予約 | 低予算個人 |
| Paperspace | Gradient Notebookが使いやすい | 学生・初学者 | コスト最適化 |
| Google Colab Pro | $9.99/月の手軽さ・A100/L4/H100/G4対応 | 研究・お試し | 長時間ジョブ(セッション切れ) |
同じH100でもどれくらい差が出るか(実例)
Llama 3.3 70B(FP16)を24時間連続でファインチューニングしたとします。H100×1枚で必要な時間料金を試算すると:
- Vast.ai(Verified ホスト平均 $1.20/hr):$28.80
- RunPod Secure($2.89/hr):$69.36
- Lambda Labs($3.29/hr):$78.96
- Paperspace($5.95/hr):$142.80
- AWS p5d.24xlarge 換算(H100 1枚分 ~$8.00/hr):$192.00
同じ作業で 最大6.7倍の価格差が出ます。これが Vast.ai の威力です。ただし「価格は安いが信頼性に幅がある」というトレードオフの読み方を、次節で解説します。
Vast.ai のメリットとデメリット(正直な評価)
メリット
- 圧倒的な価格優位:AWS/GCP の 1/5〜1/10、競合GPUクラウドの 1/2〜1/3 が常態
- GPU種類が異常に多い:RTX 3060(VRAM 12GB、エントリー向け)から B200(次世代Blackwell)まで 68種類以上。「とりあえずVRAM 16GBだけ欲しい」みたいな細かい要求に応えられる
- 秒単位課金:5分のスポット推論でも数円〜数十円。RunPod は分単位、AWS は最短秒だがインスタンス確保に時間
- 最低デポジット5ドル:ハードルが極めて低い。「とりあえずH100を1時間だけ試したい」が現実的
- Verified ホスト機能:信頼性ランクが見える化され、99%稼働実績のあるホストだけに絞り込める
- 豊富なテンプレート:ComfyUI、ollama、vLLM、Stable Diffusion WebUI 等が クリック1つで起動。Docker知識ゼロでも動く
- Jupyter / SSH / Cloudflare Tunnel 全対応
- 新しい Python SDK / CLIでインフラを完全コード化可能(2026年4-5月で大幅強化)
デメリット
- ホスト品質にばらつき:個人ホストのGPUだと突発的なダウンや回線細さがあり得る。Verified ホストでも RunPod Secure や Lambda 並の SLA は期待できない
- 機密データには非推奨:P2Pマーケットなのでホストにマシン物理アクセス権がある。後述するが、HIPAA や GDPR 必要なら Secure Cloud フィルタ必須
- Interruptible は本当に切れる:競売式で他人に上書きされると即停止。チェックポイント設計必須
- UIはやや英語特化:日本語UIなし。ただしDocker操作の延長なので難易度は高くない
- Storage は別課金:インスタンス停止中でもストレージ料金は発生する(後述)
- ネットワーク速度のばらつき:大規模モデルのダウンロードに数十分かかるホストもある
動作要件と前提知識
Vast.ai を使ううえで、クライアント側(あなたのPC)に必要なものは極めて少ないです。重い計算はすべて借りたGPUインスタンス側で動くので、ローカルPCのスペックは無関係です。
クライアントPC側の要件
| 項目 | 最小 | 推奨 |
|---|---|---|
| OS | Windows 10 / macOS 12 / Ubuntu 20.04 | Windows 11 / macOS 14 / Ubuntu 22.04 |
| ブラウザ | Chrome / Firefox / Edge / Safari いずれか最新版 | Chrome 推奨(Jupyter最適化) |
| SSHクライアント | Windows標準 OpenSSH / Git Bash / WSL2 | WSL2 + vastai CLI |
| Python | 3.8以上(CLI用) | 3.11以上 |
| 回線 | 30Mbps以上 | 100Mbps以上(大型モデルDL用) |
| 支払手段 | VISA/Mastercard クレジットカード | 同左(オートチャージ推奨) |
前提知識
- 基本的なLinuxコマンド(cd, ls, mkdir, nano など)
- SSHキーペアの概念(公開鍵/秘密鍵)
- Docker の最低限の概念(コンテナとは何か)
- 使いたい AI ツール(Ollama, vLLM, ComfyUI 等)の基本操作
これらは Ollama 完全ガイド や ComfyUI 完全ガイド でカバーしているので、不安があれば併せて参照してください。
アカウント作成からGPU起動までの完全手順
はじめての利用なら、ここから順番に実行すれば 10〜15分で最初のGPUインスタンスが起動します。
Step 1: アカウント作成とメール認証
- cloud.vast.ai にアクセス
- 右上「Sign Up」からメールアドレスとパスワードを登録
- 確認メール内のリンクをクリック(届かない場合はSettings→Resend Verification)
- メール認証完了までインスタンスのレンタル不可なので必ず実施
Step 2: 二要素認証(2FA)の設定(強く推奨)
2026年5月から TOTP アプリ対応になりました。クレジットカードを登録するので、必ず2FAをONにします。
- Settings → Account Settings → Security → Two-Factor Authentication
- 「Use authenticator app」を選択
- Google Authenticator / 1Password / Authy 等でQRコードをスキャン
- 表示された6桁コードを入力して有効化
- バックアップコード(10個)を必ず保管(紙か1Password等の安全な場所に)
Step 3: クレジット入金(最低5ドル)
- 左サイドバー Billing → Add Credit
- 金額入力(5〜500ドル)、デフォルトはクレジットカード
- オートチャージ(残高 X ドルを下回ったら Y ドル自動入金)を 必ず設定。これがないと長時間ジョブ中に残高切れで停止する
- クレカ以外は BitPay(暗号通貨)、Crypto.com も選択可
Step 4: SSH キーの登録
Vast.ai は パスワード認証無効、SSHキー必須です。手元にキーがない場合は新規生成します。
# Linux / macOS / WSL2 / Git Bash で実行
ssh-keygen -t ed25519 -C "vastai" -f ~/.ssh/vastai_ed25519
# パスフレーズは空でEnter可(推奨は設定)
# 公開鍵を表示してコピー
cat ~/.ssh/vastai_ed25519.pub
# PowerShell(Windows ネイティブ)の場合
ssh-keygen -t ed25519 -C "vastai" -f $env:USERPROFILE\.ssh\vastai_ed25519
# 公開鍵を表示
Get-Content $env:USERPROFILE\.ssh\vastai_ed25519.pub
表示された公開鍵(ssh-ed25519 AAAA... vastai という1行)をコピーし、Vast.ai コンソールの Keys ページに貼り付けて「Add Key」。
Step 5: Python CLI / SDK のインストール(任意・上級者向け)
ブラウザ完結でも使えますが、自動化したいなら CLI を入れます。2026年5月から vastai 1パッケージに統合されました。
pip install vastai
# APIキーをセット(cloud.vast.ai/cli から取得)
vastai set api-key xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
# 動作確認
vastai search offers 'gpu_name=RTX_4090 verified=True' -o 'dph_total'
vastai show instances
Step 6: GPUオファーの検索とフィルタ
コンソール左の「Search」(または旧名「Create」)から、貸出中のGPUを検索します。絞り込みは慎重に:
- Verified: ON にすると検証済みデータセンターホストのみ。初心者は必ずON
- GPU Type: 用途に合わせる。70B LLM なら H100 / A100 80GB、画像生成なら RTX 4090 / 5090
- Num GPUs: 1から複数枚まで指定可。マルチGPU構成は同一マシン内
- Disk Space: 必須要件。一度決めたら後で変更不可。70Bモデルなら最低 100GB 推奨
- DLPerf: ベンチマーク値(Deep Learning Perf)。高いほど学習が速い。価格との比でROI判断
- Inet Up / Down: アップロード/ダウンロード回線速度。100Mbps以上推奨
- Reliability: ホスト稼働率。95%以上を選ぶ
- Datacenter: ON にすると個人ホスト除外
Step 7: テンプレートを選んで起動
Vast.ai の最大の強みは 「Pythonセットアップなしでクリック1つで環境が起動」することです。以下に代表的なテンプレートを示します。
| テンプレート | 用途 | 推奨GPU | 必要ディスク |
|---|---|---|---|
| ollama official | LLM推論(API/CLI) | RTX 4090 / A100 / H100 | 50GB〜 |
| vLLM | 高速LLM推論API | A100 / H100 | 100GB〜 |
| ComfyUI | 画像生成(ノードベース) | RTX 4090 / 5090 | 80GB〜 |
| Stable Diffusion WebUI (A1111) | 画像生成(フォーム型) | RTX 4090 | 50GB〜 |
| PyTorch / Jupyter | 汎用機械学習 | 用途次第 | 30GB〜 |
| Unsloth Studio | 高速LoRAファインチューニング | A100 / H100 | 200GB〜 |
| All-in-One App Studio | 画像/動画/音楽/音声/学習統合 | RTX 4090以上 | 200GB〜 |
- Templates タブから上記いずれかを選択 → 「Use this template」
- 検索結果から欲しいGPUを「Rent」
- 30秒〜2分で起動完了
- Instances ページに移って Connect → Jupyter / SSH を選択
初期設定:起動直後にやるべき5つの設定
インスタンスが起動したら、本格作業に入る前に必ず以下を済ませます。これを怠るとあとで詰みます。
1. SSHでの接続確認
# Instances ページの Connect 欄に表示されるコマンド例(実際の値はインスタンスごとに違う)
ssh -i ~/.ssh/vastai_ed25519 -p 30543 root@ssh4.vast.ai
接続できない場合は SSH キーが正しく登録されているか、-v オプションで詳細ログを確認。
2. GPUの認識確認
nvidia-smi
# 期待出力: GPU名、VRAM容量、ドライババージョンが表示されること
3. ディスク空き容量の確認
df -h
# /workspace や / の空き容量が想定通りかチェック
4. Python 環境の確認
python --version
nvidia-smi --query-gpu=driver_version --format=csv
nvcc --version 2>/dev/null || echo "CUDA toolkit not preinstalled"
5. オートストップ(自動停止)の設定
Vast.ai では 停止し忘れが最大のコスト要因です。コンソール → Instances → 該当インスタンス → ⏱ Schedule Stop でタイマー停止を必ず設定します。3時間後 / 12時間後 / 翌朝6時など、確実に切る前提で運用してください。
基本的な使い方:3つの主要ユースケース
ユースケース1: 70B LLM を Ollama で動かす
ローカルRTX 4090 1枚(24GB)では Q4 量子化でも 70B は厳しい。Vast.ai の H100 80GB なら FP16で快適に動きます。
# H100 80GB ホストで以下を実行
# 1. Ollama 公式テンプレートを使うか、まっさらなUbuntu+CUDAテンプレートにOllamaをインストール
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
# 2. 70B モデルをプル(35GB程度のダウンロード、約5-10分)
ollama pull llama3.3:70b
# 3. 推論
ollama run llama3.3:70b "日本語で簡単な自己紹介をしてください"
外部からAPI経由で叩きたい場合は、Vast.ai の Cloudflare Tunnel を経由するのが最も安全です。Instance Portal でポート 11434 を公開すると、認証トークン付きのhttps URLが発行されます。
ユースケース2: vLLM で高速 LLM 推論サーバを立てる
本格的にAPIを叩くなら、Ollama よりも vLLM のほうが 14〜24倍高速です。とくに同時並列リクエストの捌きで圧倒的に差がつきます。
# vLLM テンプレートを選ぶか、手動でインストール
pip install vllm # 2026年6月時点で v0.21.0 が最新
# Llama 3.3 70B を 2x RTX 4090 で分散実行
vllm serve meta-llama/Llama-3.3-70B-Instruct \
--tensor-parallel-size 2 \
--dtype bfloat16 \
--max-model-len 8192 \
--port 8000
# 別ターミナルからOpenAI互換APIで叩く
curl http://localhost:8000/v1/chat/completions \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "meta-llama/Llama-3.3-70B-Instruct",
"messages": [{"role": "user", "content": "ハロー"}]
}'
2026年5月リリースの vLLM v0.21.0 では CUDA 13.0 がデフォルトCUDA wheelになり、Python 3.14 もサポートされました。MRV2(Model Runner V2)を有効化すれば B200 では 従来比 56% のスループット向上が出ます。
# MRV2 を有効化
export VLLM_USE_V2_MODEL_RUNNER=1
vllm serve ...
ユースケース3: ComfyUI で動画生成(SeeDance 2.0等)
ComfyUI v0.26.2(2026年6月25日リリース)で SeeDance 2.0 Mini や Alibaba HappyHorse 1.1、Grok 動画生成の 1080p 対応など、画像生成の最先端モデルがほぼ即日対応されています。RTX 4090 なら 720p 動画生成が現実的、5090 や H100 なら 4K の SeeDance も。
# ComfyUI 公式テンプレートを起動後、SSH に入って最新化
cd /workspace/ComfyUI
git pull origin master
pip install -r requirements.txt
# 起動
python main.py --listen 0.0.0.0 --port 8188
ブラウザから Instance Portal 経由でアクセスすれば、ローカルPCに重いモデルをDLすることなく動画生成を試せます。試作1動画あたり 10-30セント程度。買い切りで RTX 5090 PC を組むより圧倒的に安く実験できます。
実践:ローカルで動かせない大型モデルをクラウドで動かす完全手順
ここでは 「ローカルRTX 4090 1枚しか持っていないが、Llama 3.3 70B を試したい」という典型ケースを完走させます。
Step 1: GPUを選ぶ(コスト見積もり込み)
Llama 3.3 70B のVRAM要件:
- FP16(無量子化): 約 140GB → H100 2枚 / A100 80GB 2枚 / B200 1枚
- BF16: 約 140GB(FP16同等)
- Q8: 約 70GB → H100 1枚 / A100 80GB 1枚
- Q4_K_M: 約 40GB → RTX 4090 2枚 / H100 1枚で余裕
「お試し試用」なら最安構成として H100 1枚 + Q8 量子化がベスト。1時間あたり Vast.ai で 0.90〜1.50ドル。
Step 2: 検索クエリと借り上げ
vastai search offers \
'gpu_name=H100 verified=True num_gpus=1 disk_space>=100 reliability>0.97 inet_down>500' \
-o 'dph_total' | head -20
もしくはコンソールで「H100」「Verified」「Disk≥100GB」「Reliability≥97%」「Down≥500Mbps」と絞り込み、最安をRent。
Step 3: SSH接続とOllama導入
# Vast.ai から発行された ssh コマンドで接続
ssh -i ~/.ssh/vastai_ed25519 -p XXXXX root@sshN.vast.ai
# Ollama インストール(curl 一発)
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh
# Ollama サーバ起動(バックグラウンド)
nohup ollama serve > /workspace/ollama.log 2>&1 &
# モデル取得(10分前後)
ollama pull llama3.3:70b
# GPU が使われているか確認
nvidia-smi
# Memory-Usage に40GB前後乗っていればOK
Step 4: 外部から叩く(自宅PCから安全に)
Cloudflare Tunnel を有効化して、外部の認証付きURL経由でアクセスします。Vast.ai の Instance Portal が標準でこれをサポート。
# Instance Portal が起動してなければ起動
# テンプレートに含まれていない場合は手動で:
cloudflared tunnel --url http://localhost:11434 &
# 発行された xxxxx.trycloudflare.com を自宅PCから叩く
curl https://xxxxx.trycloudflare.com/api/chat \
-d '{
"model": "llama3.3:70b",
"messages": [{"role": "user", "content": "Vast.aiの感想は?"}]
}'
Step 5: 終了時の片付け(最重要)
# 1. インスタンス内のクリーンアップ(任意)
ollama rm llama3.3:70b
rm -rf /workspace/*
# 2. SSH を抜けて、コンソールから "Destroy" を必ず実行
# Stop だけだとストレージ料金が継続発生する
Stop と Destroy の違いを誤解しないでください:
- Stop(停止):GPUは止まるが、ストレージ・モデルファイル・APIキー等の状態を保持。月 $0.05-0.20/GB のストレージ料金が継続発生
- Destroy(破棄):全消去。一切の料金停止。再開時はゼロから
「明日も同じ環境を再開したい」なら Stop、「もう要らない」なら Destroy です。
応用・カスタマイズ:パワーユーザー向け設定
カスタム Docker イメージを使う
テンプレートに収まらない要件があれば、自分の Docker イメージを Docker Hub にPushしておき、Vast.ai 上で your-org/your-image:tag を指定して起動できます。Vast 公式のベースイメージは vast-ai/base-image として公開されています。TLS、認証、Instance Portal が標準でセットアップされており、これを継承するのが楽です。
FROM vastai/base-image:cuda-12.4-cudnn-pytorch
RUN pip install vllm transformers accelerate
COPY entrypoint.sh /opt/
ENTRYPOINT ["/opt/entrypoint.sh"]
Serverless SDK(2026年4月から公開ベータ)
従来コンソールでぽちぽちしていたエンドポイント作成を、すべてPythonコードで宣言できるようになりました。CI/CDに組み込みやすく、本番運用に近づく機能です。
from vastai import VastAI
from vastai.serverless import Endpoint, AutoScaleConfig
vast = VastAI()
ep = Endpoint(
name="llama-70b-prod",
image="vllm/vllm-openai:v0.21.0",
gpu_filter="H100",
autoscale=AutoScaleConfig(
min_workers=0,
max_workers=4,
target_qps=2.0,
),
env={
"VLLM_MODEL": "meta-llama/Llama-3.3-70B-Instruct",
"VLLM_ARGS": "--tensor-parallel-size 1 --max-model-len 8192",
},
)
ep.deploy()
print(ep.endpoint_url)
2FA を CLI から設定する
2026年5月から CLI 経由でも2FA管理が可能に。チーム運用で複数アカウントを一括管理する場面で便利です。
vastai 2fa setup --type totp
vastai 2fa list-backup-codes
vastai 2fa rotate
マルチGPU構成と Tensor Parallelism
1枚で収まらないモデルは Tensor Parallelism で複数GPUに分散します。同じインスタンス内のマルチGPU構成を選ぶことが前提(マルチノードはServerless Clusters機能を使う)。
# 例: A100 80GB x 2 で Qwen3.5 27B BF16 を分散
vllm serve Qwen/Qwen3.5-27B-Instruct \
--tensor-parallel-size 2 \
--dtype bfloat16 \
--gpu-memory-utilization 0.92
パフォーマンス最適化:コストと速度の両立
適切なGPUを選ぶ(用途別マトリックス)
| ワークロード | 最適GPU | 理由 |
|---|---|---|
| 7B-13B LLM 推論 | RTX 3090 / 4090 | VRAM 24GB で余裕。最安 |
| 30B-34B LLM 推論 | A100 40GB / RTX 4090×2 | Q4 でちょうど収まる |
| 70B LLM 推論 | H100 80GB / A100 80GB | Q8で1枚完結 |
| 70B 推論(FP16) | H100×2 / B200×1 | 無量子化で品質最大 |
| SDXL / FLUX 画像生成 | RTX 4090 / 5090 | VRAM 24-32GB |
| 動画生成(HunyuanVideo等) | H100 / B200 | 長尺はVRAM多必須 |
| LoRA ファインチューニング | A100 80GB | QLoRAでコスパ最高 |
| フルファインチューニング | H100×4-8 / B200×2 | マルチノード必須 |
Interruptible(中断可)を使ってコスト半減
On-demand 価格の 半額以下になります。チェックポイントを15-30分ごとに保存する設計なら、学習ジョブでも実用できます。逆に「絶対止まると困る本番API」では絶対に避けてください。
Reserved(予約)で長期コミット
1ヶ月以上同じGPUを使い続けるなら、Reserved で最大 50%引き。たとえば H100 を 3ヶ月コミットすると 0.65-1.20ドル/hr程度まで落ちます。「常時走る推論API」「定常学習バッチ」向き。
ストレージコストの最適化
- モデルファイルを
/workspaceに置きっぱなしにすると、Stop中も課金 - 頻繁に Destroy → 再構築なら、モデルファイルは Hugging Face Hubから毎回 pull が安い
- 常駐運用なら、最初から ディスク容量を必要分ぴったりで選ぶ(後から変更不可)
ベンチマーク CLI(2026年5月新機能)で実機検証
本番投入前に、候補GPUを実測比較できます。「カタログでは速いはずなのに、特定モデルだとボトルネックが別」という事故を防げます。
vastai benchmark gpu \
--gpus "H100,A100_80GB,RTX_5090,RTX_4090" \
--workload llm_inference \
--model meta-llama/Llama-3.3-70B-Instruct \
--duration 600
# 出力: 各GPUのスループット(tok/s)、レイテンシ、コスト($/1Mトークン)が表に
よくあるエラーとトラブルシューティング
エラー1: SSH接続が「Permission denied (publickey)」で失敗する
原因:SSH公開鍵が Vast.ai 側に未登録、または使用キーが違う
対処:
cat ~/.ssh/vastai_ed25519.pubで公開鍵を表示し、コンソールの Keys ページに登録済みか確認- 既存インスタンスは 新しいキーを自動取得しない。インスタンス画面の「Edit SSH Keys」から個別に追加
ssh -v -i ~/.ssh/vastai_ed25519 -p XXXXX root@sshN.vast.aiで詳細ログを取り、どの段階で失敗しているか特定
エラー2: 「ssh: connection refused」または「terminfo not working」
原因:起動直後はSSHデーモンが立ち上がっていない、または ghostty/wezterm等のターミナルで terminfo 不一致
対処:
- 起動完了の表示が出てから 追加で30-60秒待つ
- terminfo エラーは、ローカル側で
infocmp -x | ssh ... -- tic -x -で対応するか、TERM=xterm-256color ssh ...で回避
エラー3: モデルダウンロードが極端に遅い
原因:選んだホストの回線が細い(個人ホストでありがち)
対処:
speedtest-cliで計測。100Mbps以下なら破棄して別ホストへ- 検索条件で
inet_down > 500Mbps を必須にする - Datacenter フィルタをONにする
エラー4: 「CUDA out of memory」
原因:モデルがVRAMに収まっていない
対処:
- 量子化を1段下げる(FP16 → Q8 → Q4_K_M)
- vLLM なら
--max-model-lenを半減(例:8192 → 4096) --gpu-memory-utilization 0.92で限界使用率を明示- それでもだめなら1ランク上のGPUに切替
エラー5: Interruptible が頻繁に切れる
原因:人気GPUで競売単価が上昇
対処:
- 入札価格を上げて優先順位を確保
- On-demand に切り替える
- 不人気時間帯(米国深夜=日本朝)に走らせる
- チェックポイント間隔を15分以内に短縮
エラー6: 残高切れで突然停止
原因:オートチャージ未設定 + 長時間ジョブ
対処:
- Billing → Auto-billing を必ず有効化
- 長時間学習なら、ジョブ開始前に 「予想時間 × 時間単価 × 2倍」の残高を確保
- Telegram/Slack通知を設定し、残高1ドル以下でアラート
エラー7: Jupyter にブラウザ警告(証明書エラー)
原因:Vast.ai 自己署名証明書のため初回はブラウザが警告
対処:
- 初回は「詳細→このまま続行」で許可
- 恒久対応として Vast.ai の Jupyter 証明書をローカルに 1回だけインストールすると、以降は警告が消える
おすすめの組み合わせ・連携:ローカルPCとのハイブリッド運用
本ブログの読者である ローカルLLM運用勢にとって、Vast.ai は「ローカルを置き換えるもの」ではなく 「ローカルを補完するスポット火力」と位置づけるのが最強です。以下の3パターンが実用的です。
パターン1: ローカル常用 + クラウド突発スパイク
日常の7B-13Bモデル推論はローカル(RTX 4090 / RTX 5090)で完結。70B以上が必要な場面だけ Vast.ai を立ち上げる。
- ローカル側:Ollama 常駐、外部公開なし
- クラウド側:必要時に
vastai create instanceでH100を借り、Cloudflare Tunnel で安全に接続 - コスト感:月10時間使うとして H100 × 1.20ドル × 10 = 月12ドル。これ以上ローカルを強化する投資より圧倒的に安い
パターン2: ローカルで開発 → クラウドで本番推論
プロトタイプ・LoRA学習はローカルRTX 4090で、本番APIは Vast.ai Serverless で。
- ローカル:Unsloth で QLoRA を学習、Hugging Face にPush
- クラウド:Serverless Endpoint で学習済みアダプタをロード、HTTPで提供
- 強み:自動スケール対応、トラフィックなしならゼロ円
パターン3: ローカルで動画生成 → クラウドで超大型
720p動画はRTX 5090で、4K SeeDance や長尺HunyuanVideo は Vast.ai のH100で。
- 普段:ComfyUI ローカル運用、低コスト
- 特別:4K 30秒動画は H100 1時間借りで完結(約1.20ドル)
推奨PCスペック(クライアント側)と接続環境
Vast.ai のクライアント側(あなたのPC)には高性能GPUは 不要です。ただし、ローカルとのハイブリッド運用を視野に入れるなら、ローカル側の構成は重要になります。
入門:「クラウド100%」運用向け
| パーツ | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 5 / Core i5 | SSH + ブラウザだけなら不要 |
| RAM | 16GB DDR5 | VSCode + Chrome余裕 |
| SSD | 1TB NVMe SSD | モデルキャッシュ程度 |
| GPU | 不要(オンボードでOK) | 計算は全てクラウド側 |
| 回線 | 100Mbps以上 | 大型モデルDL高速化 |
標準:「ローカル+クラウドハイブリッド」運用向け
| パーツ | 推奨 | 用途 |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 7 / Core i7 | ローカル推論支援 |
| RAM | 32GB DDR5 5600 | 13Bモデル動かす余裕 |
| SSD | 2TB NVMe SSD | 複数モデルキャッシュ |
| GPU | RTX 4070 Ti SUPER (16GB) | 13B Q4 までは快適 |
| 回線 | 1Gbps(光回線) | 大型モデル試験DL |
ハイエンド:「ローカルメイン+クラウドスポット」運用向け
| パーツ | 推奨 | 用途 |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 9 / Core i9 | マルチGPU運用 |
| RAM | 64GB〜128GB DDR5 | 大型モデルCPUオフロード |
| SSD | 4TB NVMe SSD | 多数モデルキャッシュ |
| GPU | RTX 5090 (32GB) | 30B Q4 / 動画生成快適 |
| 回線 | 1〜10Gbps | クラウドモデル即時取得 |
セキュリティとプライバシー:機密データを扱う際の必須注意
Vast.ai は P2P マーケットプレイスです。ホストはあなたのデータが乗っているマシンに物理アクセス権を持っています。これを正しく理解しておかないと、後で重大なインシデントになりかねません。
Vast.ai のセキュリティモデル(公式FAQから)
- 全ワークロードは 非特権 Docker コンテナで実行され、ホスト本体や他テナントから完全に隔離される
- クライアント間でファイルシステム共有なし
- インスタンス削除時はデータ即時破棄
- すべての通信は暗号化(https / SSH / Jupyter HTTPS)
- 2018年の創業以来 主要セキュリティインシデントゼロ
Secure Cloud と Community(P2P)の違い
| 項目 | Secure Cloud | Community / P2P |
|---|---|---|
| ホスト | 検証済みDC事業者のみ | 個人含む全ホスト |
| 認証 | ISO 27001 必須 | 不要 |
| その他 | HIPAA / NIST / PCI / SOC 1-3 / GDPR 対応事業者あり | — |
| 価格 | やや高め | 最安 |
| 用途 | 本番・機密データ | 個人開発・実験 |
必須対策(公式推奨)
- 機密データはアップロード前に暗号化(gpg / age 等)
- API キー、SSH秘密鍵、認証トークン等を インスタンス内に保存しない
- 外部キーマネージャ(Vault, AWS KMS等)を使うか、env変数で都度渡す
- 用済みになったら 即 Destroy
- 機密情報を扱うなら 必ず Secure Cloud フィルタON
- 「絶対漏れてはいけない個人情報・営業秘密」は Vast.ai では扱わないのが原則
ローカルPC運用とのコスト分岐点:いつローカルを買うべきか
本記事の最重要セクションです。「ローカルGPUを買うべきか、Vast.ai で借り続けるべきか」を 数字で判断できる試算を出します。
初期投資 vs クラウド:H100相当を3年間使う場合
| 方式 | 初期費用 | 3年間電気代 | 3年間レンタル | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| ローカルRTX 5090 PC(新規) | 約60万円 | 約9万円 | 0円 | 69万円 |
| ローカルRTX 4090 中古PC | 約40万円 | 約9万円 | 0円 | 49万円 |
| Vast.ai H100 月10時間使用 | 0円 | 0円 | 約5万円 | 5万円 |
| Vast.ai H100 月100時間使用 | 0円 | 0円 | 約52万円 | 52万円 |
| Vast.ai H100 月300時間使用 | 0円 | 0円 | 約156万円 | 156万円 |
※H100相当は Vast.ai Verified 平均 $1.20/hr、1ドル150円換算。
分岐点の読み方
- 月100時間(≒1日3時間)以下の利用:間違いなくクラウドが安い。ローカル買う意味なし
- 月100-200時間:ローカルRTX 4090中古とクラウドが拮抗。所有欲・データプライバシー・常時稼働の必要性で判断
- 月200時間超(毎日6時間以上):ローカル所有が完全に有利。さらにこのレベルだとプライバシー観点でもローカル必須
- 「H100クラスが必要な作業を月10回未満」:絶対クラウド。ハードを買う合理性なし
判断フローチャート(簡易版)
- 機密データを扱うか? → YES なら原則ローカル or Vast.ai Secure Cloud のみ
- 必要VRAMは何GB? → 16GB以下ならローカルRTX 5060 Ti/4060 Ti、24GBならRTX 4090、32GBならRTX 5090、それ以上はクラウド一択
- 月の累計利用時間は? → 100時間未満ならクラウド、200時間超ならローカル
- 常時API公開する? → YES なら Vast.ai Reserved または RunPod Serverless、NOならスポット利用
まとめ:Vast.ai を使うべき人、避けるべき人
Vast.ai は 2026年6月時点で世界最安水準のGPUマーケットプレイスであり、ローカルLLM運用勢にとって 「ローカルを補完するスポット火力」として極めて優秀です。最後に、推奨対象を明確にしておきます。
強く推奨する人
- ローカルRTX 4090 / 5090 を持っているが、たまに70B以上を試したい
- LoRA / QLoRA を頻繁に試したいが H100 を買う予算はない
- 動画生成(SeeDance, HunyuanVideo等)を時々試したい
- 個人開発でAPI推論を提供したい(Serverless で従量課金)
- 研究・実験用途で月利用時間が100時間未満
- 新しいGPU(B200等)を買う前に 1時間だけ実機検証したい
避けるべき / 別の選択肢を検討すべき人
- 金融・医療など 規制業界の機密データを扱う → Lambda Labs か AWS / Azure 等エンタープライズ
- 本番APIで 99.99% SLAが必要 → Lambda Labs / RunPod Secure / クラウド大手
- 月300時間以上の使用が見込まれる → ローカルRTX 5090 PC を所有したほうが安い
- 絶対に止まってはいけない本番システム → Vast.ai は P2P 特性上、Interruptibleでなくても完璧ではない
今後の展望
Vast.ai は2026年に入ってから Serverless SDK / 2FA TOTP / ベンチマークCLI / All-in-One App Studioと連続して機能拡張しており、エンタープライズ寄りの強化が顕著です。今後 マルチノードクラスタの強化と Secure Cloud事業者の拡充が予定されており、より大規模なワークロード(数十枚規模のH100クラスタでのフルファインチューニング等)が現実的なコストで実行可能になる見込みです。
「いま月3万円ローカル電気代を払っているなら、その半分をクラウドに振り替えるだけで H100 を100時間使える」——これが2026年のGPU調達の新常識です。本記事をブックマークして、必要なときに参照してください。
本ブログのローカルLLM関連記事も併せて参照することで、ローカルとクラウドの最適な使い分けが体得できます:
- Ollama 完全ガイド — ローカル推論の基本
- ComfyUI 完全ガイド — 画像生成の基本
- RunPod 完全ガイド — RunPod との比較検討に
公式リソース:
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