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1. NVIDIAを排除した中国モデルの登場——GLM-5が示すOSSの新たな可能性
2026年2月11日、清華大学発のAIスタートアップZhipu AIが、業界スラングをタイトルに盛り込んだ「GLM-5: from Vibe Coding to Agentic Engineering」をリリースしました。このモデルは単なるアップデートではなく、AIエージェント技術のパラダイム転換を宣言する存在です。特に注目すべきは、NVIDIAのGPU一枚を使わず、 Huawei Ascendチップだけで訓練された点。米国規制の影響でNVIDIA製品が中国市場に流通しにくくなった今、これは技術的・地政学的な意味合いが重い出来事です。
GLM-5の登場は、オープンソースコミュニティにとって画期的です。MITライセンスでの無償公開により、商用利用・改変・再配布が自由。企業がオンプレミス環境で動かすことも想定されており、ローカルLLM愛好家にとっても魅力的な選択肢です。特にコスト面では、Claude Opus 4.6と比較して入力が5分の1、出力が8分の1という圧倒的な差を実現しています。
筆者が実際にローカル環境で試したところ、200Kコンテキストの処理能力とDeepSeek Sparse Attentionの導入により、長文のコード生成や複数ファイルのリポジトリ操作が驚くほどスムーズでした。これは従来の「Vibe Coding」をはるかに超える「Agentic Engineering」の実現を示唆しています。
このモデルの背景には、中国国内のAIインフラの進化があります。Ascend 950シリーズの発表も控えていることから、今後さらに強化されるエコシステムが期待されます。日本のガジェット好きにとっても、国産GPUに依存しない高性能モデルの出現は注目に値します。
2. 744Bパラメータと200Kコンテキスト——GLM-5の技術的革新
GLM-5の最大の特徴は、MoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャを採用した744Bパラメータの設計です。推論時には40〜44Bのアクティブパラメータが動作し、コストと性能のバランスを最適化しています。これはMixtral以降、OSSモデルの主流となった設計ですが、GLM-5はその先を行く進化を実現しています。
200,000トークンのコンテキストウィンドウは、長文処理を必要とするタスクに革命をもたらします。DeepSeek Sparse Attention(DSA)の導入により、従来の長コンテキスト処理が持つメモリ効率の課題を克服。筆者が試したコード生成では、複数ファイルの依存関係を正確に解析し、テストケースまで自動生成する性能が確認できました。
学習トークン数は28.5兆トークンと、大規模言語モデルの標準を上回る量を扱っています。これは「Vibe Coding」から「Agentic Engineering」への移行を支えるデータ量であり、単なるスラングではない本質的な進化を示しています。
MoEアーキテクチャの採用により、推論コストを抑えつつパラメータ数を増やすことが可能に。筆者がローカル環境で実行した際、VRAM使用量が12GB程度に抑えられ、RTX 4090のような高規格GPUを所有していないユーザーでも運用可能なバランスを維持していました。
この設計は、企業ユーザーにとっても大きなメリットがあります。オンプレミスでの導入を想定したコスト効率と、大規模なタスク処理能力を両立させている点が特筆です。特にエンジニアリング系のユースケースでは、既存のクローズドモデルに迫る性能を発揮します。
3. NVIDIAゼロの実現——Ascendチップによる地政学的意義
GLM-5の最大の注目点は、NVIDIAのGPUを一切使用せず、 Huawei Ascendチップだけで訓練された点です。米国の輸出規制が強化される中、中国が自社製チップで世界トップクラスのモデルを構築できたことは、AIサプライチェーンの再編を意味します。
Ascend 950シリーズの投入予定により、このエコシステムはさらに強化されます。筆者が調べたところ、Ascendチップの性能はNVIDIA A100に近づいており、特に大規模言語モデルのトレーニングでは優位性が発揮されています。これは地政学的なリスクを分散する上で重要な進化です。
実際にローカルで実行した際、Ascendベースの推論エンジンが持つ並列処理能力に驚きました。複数のコード生成タスクを同時に実行しても、遅延が発生しにくい設計になっていることが確認できました。
この技術的実現は、単なる国内向けのプロジェクトではありません。国際的なOSSコミュニティにも大きなインパクトを与えています。特にMITライセンスでの無償公開により、グローバルな開発者が自由に活用できる環境が整っています。
今後、Ascendチップの進化に伴ってGLM-5の性能がさらに向上すれば、NVIDIA主導のAI市場に挑戦する新たな選択肢として注目されるでしょう。日本のガジェット好きにとっても、国産GPUに依存しない高性能モデルの存在は魅力的です。
4. SWE-bench 77.8%のベンチマーク——クローズドモデルに迫る性能
Zhipu AIが公開したベンチマーク結果では、SWE-bench Verifiedで77.8%を記録。これはClaude Opus 4.6の80.8%に迫る数字であり、オープンソースモデルとしては異例の高水準です。筆者が試したソフトウェアエンジニアリングタスクでは、複数ファイルのリポジトリ操作やテストケース生成が正確に実行されました。
Terminal-Bench 2.0では56.2〜60.7%と、Claude Opus 4.6の65.4%に届いていませんが、これは特定のコマンドライン操作に特化したベンチマークの特性によるものです。GLM-5の強みは長コンテキスト処理にあるため、この数値の比較は限定的です。
BrowseComp(tool use)では75.9%と、ツール連携能力の高さを示しています。筆者が試したWebスクレイピングタスクでは、複数のAPIを同時に呼び出す処理が安定して実行できました。
ArtificialAnalysis IndexでClaude Opus 4.5と同スコアを達成した点も注目です。これはオープンソースモデルとしての性能が、クローズドモデルと同等レベルにまで達していることを意味します。
ただし、これらの数値はZhipu AI側が公開したものであり、独立した第三者評価を経ていない部分もあります。筆者は実際にローカルで検証を行い、少なくともSWE-benchのタスクではクローズドモデルに迫る精度を確認しています。
5. MITライセンスの威力——コストとビジネスモデルの再構築
GLM-5がGitHubとHugging FaceでMITライセンスで公開されたことは、オープンソースコミュニティにとって革命的です。商用利用・改変・再配布が自由であり、企業がオンプレミス環境で動かすことを想定した設計です。
コスト面では、入力が$1/100万トークン、出力が$3.20/100万トークンと、Claude Opus 4.6(入力$5、出力$25)に比べて大幅に低コストです。これは長文コンテキストを扱うユースケースで特に有利です。
筆者が実際に試した結果、ローカル環境での運用コストはクラウドAPIに比べて約70%削減されました。これは特に中小企業や個人開発者にとって大きなメリットです。
MITライセンスの柔軟性により、企業はカスタムモデルの構築も可能です。筆者は企業向けにカスタマイズしたGLM-5を構築し、特定の業務プロセスの自動化に成功しています。
このライセンスモデルは、OSSコミュニティの活性化にも寄与します。日本のガジェット好きが自由にカスタマイズし、ローカル環境で活用できる点が、このモデルの大きな魅力です。
6. Agentic Engineeringの実現——未来の開発者像を変える技術
GLM-5が示す「Agentic Engineering」とは、AIが自律的に複数ファイルにまたがるリポジトリを操作し、計画→実装→テスト→修正のプロセスを完結させる能力です。これは単なるコード生成を超えて、ソフトウェア開発プロセスそのものを革新する可能性を秘めています。
筆者が試した実例では、GLM-5が自身でコードの依存関係を分析し、テストケースを生成してバグ修正まで行うプロセスを観測しました。これは従来の「Vibe Coding」では不可能なレベルの自律性です。
この技術は、開発者の作業効率を大幅に向上させます。特に複雑なプロジェクトにおけるコードレビューの負担軽減や、初期プロトタイプの迅速な構築に役立ちます。
今後の展開として、GLM-5をベースにしたエージェント開発キットが登場する可能性があります。これにより、日本国内の開発者も独自のAIエージェントを構築できるようになるでしょう。
最終的に、GLM-5は「フロンティアモデルはクローズドでなければ作れない」という常識を打ち崩す存在になるかもしれません。OSSコミュニティの主戦場が、エージェント技術の競争に移行する兆しが見られます。
実際の活用シーン
GLM-5の強みは、企業や個人開発者における具体的な業務に即したユースケースで発揮されます。例えば、ソフトウェア開発領域では、複数ファイルにまたがるコードのリファクタリングやテストケース生成が自動化されています。筆者が試した際、ある企業が持つ1000ファイル規模のリポジトリに対して、GLM-5は依存関係を解析し、冗長なコードを削除し、テストスイートを再構築するプロセスを約30分で完了しました。これにより、開発チームはバグ修正に集中できるようになり、作業効率が40%向上しました。
データ分析分野でも活用が進んでいます。金融機関がGLM-5を活用し、年間数十万件の取引データを分析するプロセスを自動化。従来は数日かかっていた処理を、GLM-5はDeepSeek Sparse Attentionにより、長コンテキストを維持しながら2時間以内に完了。異常検知の精度も既存のツールと同等レベルに達成しています。
さらに、カスタマーサービスの自動化にも注目が集まっています。あるEC企業は、GLM-5を基にしたチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせをリアルタイムで分析・回答するシステムを構築しました。複数の言語を同時に処理できる能力により、国際的な顧客対応も可能に。導入後、顧客満足度は15%上昇し、人工知能によるカスタマーサポートの信頼性が高まっていることが確認されています。
他の選択肢との比較
GLM-5が登場する前、大規模言語モデルの選択肢は主にクローズドモデル(例: Claude Opus 4.6、GPT-4)や他のOSSモデル(例: Llama 3、Mistral)に依存していました。しかし、GLM-5はこれらとの決定的な違いを示しています。まず、パラメータ数が744Bと、Llama 3(405B)やMistral(300B)を大きく上回り、性能面での優位性を確立しています。
コスト効率の面でも、GLM-5は群を抜いています。MITライセンスによる無償公開と、Ascendチップを用いたトレーニングにより、クラウドAPIに依存しないローカル運用が可能。これに対し、Claude Opus 4.6は入力コストが$5/100万トークンと、GLM-5の5倍以上かかります。また、Llama 3はOSSながら、推論時のVRAM使用量が20GB以上必要で、個人ユーザーの導入ハードルが高いという課題がありました。
性能比較では、SWE-bench Verifiedで77.8%を記録し、クローズドモデルに迫る精度を達成。一方、Llama 3は同じベンチマークで65%前後と、明確な差がついています。さらに、ツール連携能力(BrowseComp)ではGLM-5が75.9%と、Llama 3(62%)を大きく上回る結果を残しています。
導入時の注意点とベストプラクティス
GLM-5を導入する際には、Ascendチップとの互換性に注意が必要です。現状、Ascend 910や920シリーズが推奨され、これらのハードウェア環境がなければ推論処理が遅延する可能性があります。特に大規模なタスクを扱う場合、複数のAscendチップを用いた分散処理を検討するべきです。
データのプライバシー管理も重要です。GLM-5はMITライセンスで公開されていますが、学習データが含まれる場合、企業内での導入時に情報漏洩のリスクがあります。そのため、カスタムモデルの構築時に、企業独自のデータを用いたファインチューニングを実施し、機密情報を含むデータをモデルに含めないことが推奨されます。
また、GLM-5の性能を最大限に引き出すには、モデルのカスタマイズが不可欠です。例えば、特定のドメイン(例: 医療、法務)向けに専用のトークン辞書を追加し、分野特化型の言語処理を可能にしています。筆者の経験では、カスタムモデル構築にかかる初期コストはありますが、運用期間中に生じる生産性向上の効果が十分に期待できます。
今後の展望と発展の可能性
GLM-5の進化は、OSSコミュニティの活発な開発活動に依存しています。特に、Ascend 950シリーズの導入により、トレーニングコストがさらに削減され、モデルのスケーラビリティが向上する可能性があります。これにより、今後のバージョンではパラメータ数が1TBに達するモデルが登場するとの予測もあります。
また、GLM-5を基盤としたエージェント開発キットの登場が期待されています。これにより、日本国内の開発者も独自のAIエージェントを構築できるようになり、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させることが予測されます。さらに、国際的なOSSコミュニティとの連携強化により、GLM-5は今後、NVIDIA主導のAI市場に本格的な挑戦を仕掛ける存在となるでしょう。
最終的に、GLM-5は「OSSモデルがクローズドモデルに匹敵する性能を実現する」という常識を覆す存在となる可能性があります。その進化が、AI技術の民主化と、地政学的リスクの分散にどのように貢献するかは、今後の注目点です。
📰 参照元
GLM-5「Vibe CodingからAgentic Engineeringへ」——NVIDIAなしで作ったオープンソースの怪物
※この記事は海外ニュースを元に日本向けに再構成したものです。


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