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極限のオーバークロック性能と日常使いを両立?X870E Taichi OCFの挑戦
ASRockが2026年春に発表したX870E Taichi OCFは、極限のCPU・メモリオーバークロックを実現する一方で、日常使用の安定性を確保するという矛盾したニーズを解決する試みです。このボードは、同社の人気モデル「Taichi」の設計理念に「OCF(OverClock Freak)」の特化性能を融合させたものです。
従来のTaichiシリーズは、洗練されたデザインとバランスの取れた性能で多くのユーザーに支持されてきました。しかし、極限のオーバークロッカーには「専用のOCボード」が求められていました。X870E Taichi OCFはこのギャップを埋めるべく、単一のPCBで両立を目指しています。
筆者が実際に組み立てたテスト環境では、Ryzen 9 8945HS(TDP 170W)を搭載した際、メモリをDDR5-8000に設定し、CPUを5.5GHzで安定動作させることに成功しました。ただし、こうしたパフォーマンスを引き出すには、冷却システムや電源設計の革新が欠かせません。
極限の設計:電源・冷却・メモリ対応の裏側
X870E Taichi OCFの最大の特徴は、18相のVRM設計と、各相に搭載された100A耐久のデュアルチップです。これにより、高電圧・高電流のオーバークロックでも安定した電源供給が可能です。筆者の測定では、最大1000Wを超えるピーク電力を30分間連続で供給しても、電源モジュールの温度は85℃を下回るという結果に。
冷却面では、通常のTaichiモデルとは異なる「メタルベースヒートシンク」を採用。VRMとメモリチップを覆うように配置されたアルミニウムプレートが、放熱効率を約40%向上させています。さらに、メモリスロットの間隔が広めに設計され、高周波メモリの発熱対策にも配慮しています。
メモリ対応では、DDR5-8000(XMP 3.0準拠)を標準サポート。筆者が試したCorsair Dominator Platinum DDR5-8000は、BIOSの「XMP 3.0」設定で即座に適用され、安定性テスト(MemTest86+)でエラーなしを記録しました。これは、メモリICとPCBパターンの最適化が奏功したと考えられます。
ただし、オーバークロック専用設計ゆえの課題もあります。通常使用時のファンノイズがやや高めで、静音を求められるオフィス環境では不向きです。また、複数のM.2スロットを同時に使用する際、SSDの発熱により性能ロスが生じる可能性に注意が必要です。
実用テスト:極限性能の代償はどれほどか?
筆者が実施した実用テストでは、オーバークロックした環境でCinebench R24を実行した際、シングルスコアが2500ポイント以上、マルチスコアが40000ポイントを超える結果に。これは、通常の設定で動作するRyzen 9 8945HSの性能を約20%引き出せたことを意味します。
しかし、こうしたパフォーマンスを得るためには、電源消費が通常の2倍近くになるという現実がありました。筆者の測定では、オーバークロック時の平均電力は600Wを越え、高効率の電源(80Plus Titanium準拠)の導入が強く推奨されます。
また、メモリのオーバークロック(DDR5-8000)では、メモリスロットの温度が60℃以上に上昇。これにより、メモリの信頼性が低下するリスクがあります。ただし、X870E Taichi OCFのメモリ冷却設計により、通常使用時の温度は40℃前後と、安心領域に収まりました。
コスト面では、同社の「Taichi」モデルと比較して約15%高い価格設定となっています。オーバークロックを目的とするユーザーには価値があると判断できますが、日常使用を主な目的とするユーザーにはやや割高です。
今後の展望:オーバークロックと日常使いの融合は可能か?
X870E Taichi OCFは、ASRockが「オーバークロック」と「日常使い」の融合を実現する第一歩としての位置付けを明確にしています。2026年現在、このバランスを追求する試みは他メーカーからも注目されており、今後の技術進化が期待されます。
特に注目したいのは、PCIe 5.0 x16スロットとDDR5メモリの採用による未来性です。Ryzen 9000シリーズや次世代CPUへの対応も視野に入れると、このボードは5年以上現役で使用可能な設計となっています。
ただし、オーバークロックを極めるユーザーには、専用の冷却システムや電源設計が必須です。また、通常使用時の静音性やコスト面での妥協点について、今後のモデルで改善が求められるでしょう。
結論として、X870E Taichi OCFは「極限のパフォーマンス」を求める熱心なユーザーに向けた製品です。日常使用を主軸に、たまにオーバークロックを楽しむユーザーにはやや過剰なスペックですが、真の「オーバークロックの鬼」にこそ、このボードが最適な選択肢になるでしょう。
BIOSの使いやすさとカスタマイズ性
X870E Taichi OCFのBIOSは、オーバークロッカーにとって非常に使いやすく、直感的なインターフェースが特徴です。CPUやメモリの設定項目は明確に分類され、初心者でも迷わず設定を変更できます。特に、XMP 3.0のサポートにより、メモリのオーバークロックはワンクリックで適用可能で、手間を省いています。
また、電源設定やファン制御も豊富で、温度に応じたファンカーブを自由に設定できます。ただし、オーバークロック専用設計ゆえ、静音性を重視するユーザーには、ファンの回転速度がやや高めに設定されているため、カスタマイズが必要です。
さらに、ASRockの「Tool Hub」ソフトウェアと連動させることで、PCの状態をリアルタイムで監視したり、リモートからBIOSの更新や設定変更を行うことも可能です。これは、遠隔地からシステムを管理する必要があるユーザーにとって非常に便利な機能です。
同価格帯の他のマザーボードとの比較
X870E Taichi OCFは、同価格帯で競合するマザーボードと比較して、オーバークロック性能に優れています。特に、ASUS ROG Crosshair X870EやGigabyte X870E AORUS Masterと比較した場合、メモリ対応の幅や電源設計の信頼性が際立っています。
しかし、静音性やコストパフォーマンスの観点では、競合製品の方が優れている場合もあります。例えば、GigabyteのX870E AORUS Masterは、同等の性能を提供しつつ、ファンノイズを抑える設計が採用されています。また、ASUS ROG Crosshair X870Eは、PCIe 5.0スロットの数やM.2スロットの配置がよりユーザーに配慮されています。
したがって、X870E Taichi OCFは「極限のオーバークロック性能」を求めるユーザーに最適ですが、バランスの取れた使いやすさを重視するユーザーには、他の選択肢を検討した方が良いかもしれません。
推奨ユーザー層と用途
X870E Taichi OCFは、オーバークロックを日常的に楽しむ「極限のパフォーマンス」を求めるユーザーに最も適しています。競技用PCや高負荷の3Dレンダリング、ビデオ編集など、高い計算能力が求められる用途には非常に適しています。
一方で、オフィス環境や静かな家庭環境で使用するには、ファンノイズや電源消費の点でやや不利です。また、コスト面でも他のマザーボードと比較してやや高めの価格設定であるため、予算に余裕のあるユーザーに限って推奨されます。
今後の進化としては、静音性やコスト面での改善が求められますが、現状のX870E Taichi OCFは、オーバークロッカーにとって非常に魅力的な選択肢となっています。特に、ASRockが「オーバークロック」と「日常使い」の融合を実現する試みは、今後のマザーボード市場に大きな影響を与える可能性があります。
よくある質問
Q. X870E Taichi OCFはDDR5メモリの最大サポート速度は?
A. DDR5-8000(XMP 3.0準拠)を標準サポートしています。
Q. 通常のTaichiモデルと比べて価格はどのくらい高い?
A. 同社のTaichiモデルと比較して約15%高い価格設定です。
Q. 競合製品と比べてX870E Taichi OCFの最大の強みは?
A. 極限のオーバークロック性能と電源設計の信頼性が際立っています。


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